数理地理モデリング研究会

研究会発足の趣旨


数理地理モデリングへの試み

経済学は、空間経済学の進展に基づき、「空間」をモデル化することができたのか。地理学は、地理情報システム(GIS)のツールを活用して、本当に「空間」を分析できるようになったのか。

さらに視界に含むべきなのは、たとえば、現象学系の地理学者であるイーフー・トゥアンが描く「空間」と「場所」は、自然とヒトとの応答の結果として、著しく多様で多彩であるという環境史的な原点である。そのような複雑な地理的空間に対して「数学」は、果たして、どのような貢献ができるのか。

空間経済学、地理情報システム、そして数学が紐解く世界を「環境人文学 (Environmental Humanities) ― 叙述と数理の協働 ― 」と呼ぶことができるかもしれない。この組み合わせではないが、ドイツ、オーストラリアなど、世界各地で、「環境人文学」は新たな知の世界を展開しつつある。簡潔に述べるとするならば、人類の生活の歴史をヒトだけの歴史ではなく、ヒトと穀物、ヒトと土壌、ヒトと疫病などのように環境との相互関係を軸に理解しようという試みである。ドイツ・ミュンヘンのレイチェル・カーソンセンターや日本の総合地球環境学研究所がその理念の代表者である。

さて、環境人文学的な研究と環境改善を目指す実践の背景として、地域の人口や災害、疫病、風土、生産、気象等を包括的に叙述する「地誌」の国際比較研究を出発点にしてみよう。特に16世紀から19世紀にかけての日本やヨーロッパは独自の「近世」を経験しており、世界史的にも、類を見ない多種多様な史料が残されている。

もっとも、歴史資料は地域固有の言語・文化に根ざしており、数量的記述についても標準化・規格化されていない。そのため、国際間や時代間での比較が難しく、個別地域・事例毎の叙述的研究に留まる危険性が高い。この問題を克服するために、数学をベースに地図を表記することを目的とするGIS分析の現状から抜けだし、地域の普遍的記述の開発が望まれている。特に数理科学として普遍的記述の開発と数理地理モデルによる質的理解が求められている。

例えば村落間の繋がりをGraphとして記述し解析することで、時代毎の村落クラスタの比較を議論したい。近世および初期近代に残され散る地誌そのものは統計情報を含む叙述の積み上げでしかない。ここから個別事例を越えた人類の生活に対する本質的理解を進めるためには、数理地理モデルの導出が必要である。豊富な史料データに基づいた数理地理モデルを構築し、その定性的特徴を分岐解析などで明らかにすることで、地域固有の史料の背後にある普遍的現象への質的理解に繋げていきたい。

運営について

この研究会は以下のメンバーで運営しています.

共催

地球ディベロプメントサイエンス国際コンソーシアム / International Consortium for Earth and Development Sciences (ICEDS)

外部資金

RIMS共同研究Project「数理地理モデリングによる環境人文学の展開」

連絡先

数理地理モデリング研究会
〒760-8521 香川県高松市幸町1-1 香川大学 教育学部
青木 高明
Email: iceds-mathgeomodel@cc.kagawa-u.ac.jp